サラリーマン行政書士の日記

本ブログは、サラリーマン行政書士である私が本業及び副業並びに中小企業診断士に挑戦及び奮闘する様を綴るブログです。

「慟哭の谷」三毛別熊害事件

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本日ご紹介する本は、いつもと大分毛色が違います。

 

慟哭の谷

 

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おそらく多くの方が知らない、読んだことがない本だと思います。

とある事件を描いたノンフィクション小説です。

 

この事件は、第一次世界大戦まっただ中の1915年12月、北海道苫前村の三毛別という集落で起きた、日本史上最悪の羆事件です。

最初の襲撃が12月9日、羆が射殺されたのが12月14日。

この6日間に死者8名、重傷者2名という被害をもたらしました。

 

これらの日数、人数からも十分恐怖は伝わってくるのですが、この熊害(ゆうがい)事件は、著者の木村盛武の丁寧な取材活動により、詳らかな事実関係を今に残しています。

 

そしてその取材活動の成果が本書というわけです。

著者の木村盛武は、北海道の林務官として苫前村の担当になった際に、事件のことを知り取材を始めたそうです。

 

熊には死んだふりは意味がない、というのはこの事件でも明らかになります。

そのほかにも、

  • 火を恐れない
  • 一度とらえた獲物に対し異常なまでの執着を示すこと
  • 一度味を覚えると、人の肉にも執着すること
  • 冬眠に適した穴を見つけられなかった穴持たずが狂暴化すること

等、羆に関する多くの習性が明らかにされております。

 

また、本書を基に、吉村昭の小説「羆嵐」が生まれ、倉本聰のラジオドラマも生まれました。

さらに、マンガや舞台演劇などにもなったそうです。

 

私はネットでラジオドラマを知り、「羆嵐(くまあらし)」を読んで、それから数年ぶりにこの事件を扱った本書を読むに至りました。

 

羆嵐」は被害者の名前を変えている以外は、ほぼノンフィクションです。

吉村昭といえば記録小説、事実を積み上げていくスタイルで読み手を惹き付ける小説家。

読み物としては、「羆嵐」のほうが面白いのですが、「慟哭の谷」は、文庫本化にあたり、第2部を盛り込まれております。

この第2部は、著者木村の林務官としての羆遭遇体験や、三毛別以外の熊害事件についてのデータが掲載されております。

 

日本史上最悪というと三毛別ですが、日高山系で福岡大学ワンダーフォーゲル部が襲撃にあった事件も有名です。

こちらの事件でも、羆が一度自分のものとしたキスリング(山登り用のバッグのことらしいです)を取り返したために、執拗に追われる身となり、3名が命を落とします。

 

この事件でも、羆の好奇心の高さと、獲物への執着心がうかがえます。

 

詳しくは、「慟哭の谷」、「羆嵐」をお読みいただくか、Wikipediaにもかなり詳しい経緯が記載されていますので、お勧めです。

 

本書を読んで改めて三毛別事件に触れましたが、感じるのはやはり、大自然の中での人間の無力さ、これに尽きますね。

 

この事件の羆は体長約2.7mと伝えられています。

羆の体長というのは、四本足のときの頭からお尻までです。

ですから、二本足で立ち上がったときはゆうに3mを超えたはずですし、前足を広げて立ちふさがれば、人間はもはや恐怖に立ち尽くすしかありません…。

 

野生の羆、3mの巨体を目の前にしたら、成す術もない、もはやなされるがままだという思いしか湧いてこないのではないでしょうか。

相手は獰猛な羆であり、また開拓しようと足を踏み入れた人間に襲い掛かる厳しい大自然そのものです。

 

ちなみに、日本家屋はおおむね天井高が2.4mですので、自室の天井を見上げて、羆の大きさを感じることもできるでしょう。

また、日本人の女性の平均身長は160㎝弱だそうですので、その2倍です。

もちろんそんなサイズの羆はまるまると太っているので幅広で、もはや壁そのものです。

 

そのようなことを考えていると、事件の恐怖とは裏腹に、羆というものへの興味が湧いてきてしまうのです。

近年は熊が人里に降りてくるだとか、キノコ狩りでクマに遭遇しただとかいう事件が増えています。

これは、人間の生活が山林の環境を変えてしまっていること、そのために山林の奥深くから、人里に降りてこざるを得なくなっていることが大きな原因です。

 

つまり、熊と人間の関係を考えることが、自然と人間との関係を考えるということにもつながるのではないかと思います。

 

熊から始まる環境問題への動機づけです。

 

羆嵐 (新潮文庫)

羆嵐 (新潮文庫)

 

 

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