タイトルに一目ぼれして買いました。
約400ページで50の発明を紹介するということは、1発明当たり8ページ。
もしもあまり面白くなかったとしても、1テーマ8ページなら、何とか最後まで読み終えられるかなという算段。
結果としてはとても面白い本で一安心。
タイトル買いはギャンブルですが、今回は勝負に勝ちました。
発明の本質を紐解く
本書は「発明」をただ集めて紹介するものではなく、それぞれの発明が本質的に、何を解決したのかを紐解き、その効果がいまの経済に対してどのように影響しているのかについても書かれています。
紹介される発明の中には、全く異なる場所で生まれたにもかかわらず、一つの文脈で語られるものもあります。
異なる複数の発明も、現実の経済に実装されるなかで、一つの文脈に組み込まれていくんでしょうね。
ある一つの発明が、過去のいくつかの発明を受けて生まれていくということが、本書の50の発明を通じて理解できます。
発明は勝者と敗者を生む
また、発明というものは、誰にとっても喜ばしいものではありません。
それは経済の歴史を振り返れば、目にすることができます。
産業革命では、手工業から機械工業へとシフトしました。
それまで職人技だったものが、機械で大量生産できるようになりました。
こうなると、昔ながらの職人は機械に職を奪われます。
この時に起こったのがラッダイト運動です。
職を奪われた人たちは、織機を壊して回りました…。
しかしそれも長くは続かず、結局はテクノロジーの勝利に終わりましたが、このような産業革命、イノベーションの陰には、いつも敗者がいるのです。
職を奪われると言えば、正にいまの経済社会でも、「AIに職を奪われる」というのはよく聞く話ですね。
経済の歴史を振り返れば、職を奪われた人たちがどういう人たちだったかわかります。
自分がそうならないように、どうすればAIの波、新しい経済の波に乗れるのかを考えるのが勝者への道です。
そして多くの人をこの波に巻き込んいくことが、新しい経済において敗者を減らすことに繋がるのではと思います。
いまの経済をつくった最高の発明
多くの発明が紹介される中で、一番興味深かったのは「有限責任株式会社」です。
これは世界史の教科書でも学びましたよね。
私の個人的な意見ですが、50の「いまの経済をつくったモノ」のなかで、有限責任株式会社が最高の発明かなと。
時は1600年、世界初の株式会社として設立されたのが東インド会社です。
東インド会社は、イギリス王室の特許状で「有限責任」であることが認められました。
設立時には218名もの商人が株主となったようですが、これだけ多くの株主が集まったのも、失敗しても出資額以上に責任を負わないという有限責任だったからこそです。
また、一株あたりの出資は少額でも、沢山の人からお金を集められるという特性も、株式会社ならでは。
これはとても画期的なことで、現代においても世界中の企業がこの有限責任株式会社という形態で運営されています。
まさにいまの経済をつくったモノの最たるモノですね。
この発明がなかったら、その後の多くのイノベーションも起きなかったか、大きく遅れ、いまの経済には到底及ばなかったのではないかと思います。
イノベーションというと製品やサービスを思い浮かべがちですが、こういった経済社会そのものの仕組み、インフラに関するイノベーションもたくさんあります。
本書で紹介されている例では、福祉国家、複式簿記、知的財産権、不動産登記などです。
今ではこれらのない経済、世の中なんて考えられませんね。
経済のグローバリゼーションを加速させた箱
「有限責任株式会社」の他に、もう一つとても気になった発明があります。
それは「輸送用コンテナ」です。
この箱の発明は、いまの経済のグローバリゼーションを加速させた推進剤です。
こちらは「コンテナ物語」という本で、まるまる一冊かけて紹介されています。
実はコンテナそのものを発明したということではありません。
コンテナを用いてイノベーションを起こした、つまり市場を作ったということが、この発明の重要ポイントです。
「コンテナ物語」については以下のエントリーで紹介しています。
まとめ的なもの
読書というものは、こなせばこなすほど繋がっていくものだなと、つくづく思います。
読書の連鎖は知識の連鎖、どんどんと知識がつながり、幅が広がっていきます。
発明もいまの経済も、こういった知識の積み上げ、知識の連鎖により生まれたのでしょうね。
本書で紹介される50、フィフティの発明も、単独で生まれた発明もあれば前にあったものを受けて生まれた発明もある。
それが世に出てからはそれぞれが繋がっていって、いまの経済をつくっている。
なにか感慨深いものがありますね。